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日本股関節学会:パネルディスカッションで講演してきました

日本股関節学会(山形):パネルディスカッションの演者として参加してきました。

股関節学会とは歴史ある学会であり、股関節外科医における最大の全国規模の学会です。

今回パネルディスカッションの演者に選んでいただき講演させていただく機会を得ました。

研修医の頃、初めて発表した頃を思い出すと、このような大きな学会で演者として講演できることをとても嬉しく思います。

さて、今回のテーマは股関節疾患と超音波。その中で自分に与えられたテーマは「鼠径部痛に対するハイドロリリース」。演者として壇上に立つと150人ほど用意された椅子がほぼ全て埋まり、空いたスペースにも立って聞かれている先生方もおり、今回のテーマに対する興味・関心が高いことをうかがわせました。

ハイドロリリース。これは痛み止めのブロック注射とも異なります。ブロック注射は痛み止めの薬剤を投与することで痛みを軽減する治療です。一方、ハイドロリリースは鎮痛効果のある薬剤はごくごくわずかです。投与するのはほぼ水、生理食塩水です(体の水分と同じものになります)。

超音波(エコー)を用いて痛みの原因となりうる部位に生理食塩水といった水分を投与することで症状が改善できる処置になります。生理食塩水(+わずかな鎮痛剤)を入れるだけで疼痛が緩和できるって不思議ですよね。

現段階ではまだ明確な理由はわかっていませんが、最終的に痛みを引き起こす末梢神経をターゲットにしています。神経に負荷をかけているものとして周囲の癒着や筋肉(筋膜など)の動きが悪くなること(滑走不全)も関与していることが想定されます。

ただし注射の効果は長期ではなく短期的な場合が多いです。
自分としてはこのハイドロリリース、治療よりもどこに痛みの原因となっているかを評価する診断ツールとして重要な役割があると考えます。そこで原因がわかれば、レントゲンやMRIでもわからなかった痛みの原因がわかるようになり、リハビリテーションでの機能改善を介入することで根本的な治療が提供できると期待しています。

こんな内容を講演でお話しさせて頂きました。講演後、いろいろな方から反響があり、引き続き超音波診療によるアプローチを極めていきたいと思いました。

学会でもクリニックの治療内容を胸を張って話せるように、リハビリスタッフともども、今後も真摯に治療に向き合っていきたいと思います。

(錦野 匠一)